2004-01-01から1年間の記事一覧

エイリアンVS.プレデター

この映画には二つの側面がある。一つは映画のタイトルが示しているとおり「怪物」対「怪物」の死闘であり、もう一つは「襲ってくる怪物」対「襲われる人間」である。襲われる恐怖を演出するためにポール・W.S.アンダーソン監督はバイオハザードの時と同…

ゴジラ FINAL WARS

映画の中に、右手と左手に怪獣の人形を持ってぶつけながら遊んでいる男の子が出てくるのだが、彼はテレビで本物の怪獣が暴れているのを見て大喜びする。50年続いてきたこのシリーズはこういう「男の子」の欲望を満たしてきたのだと思う。実際、映画館には…

ターミナル

トム・ハンクスは旧ソ連圏内にある架空の国クラコウジアからアメリカ合衆国にやって来たビクター・ナボルスキーを演じている。おっとりしたユーモアで誰からも好かれるハリウッド俳優である彼が英語も話せない外国人を演じると聞いて、違和感をもつ人もいる…

ベルヴィル・ランデブー

風刺漫画やギャグ漫画では、誇張されたキャラクターやキャラクターのおかしな動きを表現するために曲線が多く使われるが、手書きの曲線で構成された絵は写実的な絵と違いいつもずれやゆらぎをはらんでいて、これが動き出したら楽しいだろうな、と読者に思わ…

マイ・ボディガード

スパイゲームに続いてトニー・スコットが描いているのはメキシコシティを舞台にした苛酷で血なまぐさい誘拐をめぐるマネーゲームである。冒頭からめまぐるしく画面が切り替わる編集で遠近感を失った混沌とした世界として提示されるこの都市では、人の命や切…

僕の彼女を紹介します

整合性のある物語を作って、その登場人物にあう役者を連れてくるというやり方で作られた映画ではないのは明らかだ。クァク・ジェヨン監督はまずチョン・ジヒョンをどう撮りたいのか、彼女に何をさせたいのか、どんな服を着せたいのか、それを最優先していて…

Mr.インクレディブル

大衆はヒーローという特別な存在に対して相反する感情を持っている。ヒーローは普通の人ができないことを生まれ持った才能で成し遂げてしまう存在で、周りの人々はヒーローを賞賛し、彼らに憧れる。インクレディブルの活躍が映画の冒頭、古いニュース映像で…

ポーラー・エクスプレス

主人公の少年は北極がどんな場所か百科事典を読んで知っているし、プレゼントは両親が買ってくることを知っている。しかし彼はサンタクロースがやってくることを知らせる鈴の音を心のどこかで待ち望んでいる。サンタクロースがフィクションだと知りながら彼…

TUBE

雑魚の撃った弾は主要人物には当たらないのが映画の約束事とはいえ、当たるかもしれないという緊張感をもたせるのが監督の演出ではないだろうか。空港で警官に囲まれようが、地下鉄を狙撃隊に囲まれようが、二人か三人でバリバリ撃っているだけで相手がバタ…

ハウルの動く城

戦時中という舞台設定にもかかわらず、戦争そのものについての詳しい状況説明はなく、下町の一人の少女から見た戦争にほぼ限定されている。つまりそれは空爆で破壊され燃える都市であり、その空爆を引き起こす政治は語られない。いつもの宮崎駿のヒロインと…

海猫

兄弟両方から愛され破滅する女性という物語内容にもかかわらず、主人公薫(伊東美咲)の感情の動き、情感の高まりなどが画面からほとんど伝わらないので見ているのがかなりつらかった。口数の少ない女性という設定なのだろうが、表情からも少ないセリフから…

血と骨

冒頭いきなり金俊平(ビートたけし)が英姫(鈴木京香)を強姦する場面から映画は始まるが、崔洋一監督はその出来事が起こるに至る経緯、例えば彼がどこで彼女を見かけ、欲望をもつに至ったかということは一切省略して、いきなり出来事そのものを描写する。…

隠し剣 鬼の爪

藤沢周平の短編2本を原作にしているためか、各エピソードがあまりうまくつながっていないように思える。主人公宗蔵(永瀬正敏)を中心にして、一方にはきえ(松たか子)との身分違いの恋愛感情が描かれ、もう一方には幕末の政治に巻き込まれ友人の狭間(小…

コラテラル

タクシー運転手のマックス(ジェイミー・フォックス)と殺し屋ヴィンセント(トム・クルーズ)、偶然一夜行動を共にすることになった男同士の関係に的を絞った物語で、それ以外の要素はこの二人が行動を共にするという設定を支えるためにある。人間関係も女…

いま、会いにゆきます

テレビドラマで活躍する土井裕泰の映画初監督作品。雨の季節に死んだ妻が還ってくるという不思議な出来事を、特撮にほとんど頼らず、春から梅雨の季節に入って変わる陽射しの変化、濡れて色の濃くなった森の緑、廃墟の濡れたアスファルトの色などで表現する…

2046

物書きであるチャウ(トニー・レオン)の前に現れる女性たちはみな報われない愛を生きている。そして彼女たちは相手が今自分のそばにいないことへの苛立ちや悲しさをまぎらわすため煙草を吸い、どうしても縮めることのできない相手との距離に涙を流す。彼女…

モーターサイクル・ダイアリーズ

砂漠、積雪、熱帯雨林など、旅してまわる南米の土地の変化が肌で感じられる。また行く先々で行われるダンスパーティーの音楽とそれにあわせて踊る人々のリズムも変わり、言葉使いも変わる。だが映画全体から感じられるのは乾いた気持ちのいい空気である。こ…

シークレット・ウインドウ

湖畔の別荘で執筆活動をする作家が主人公で、主人公を演じるジョニー・デップ一人で画面に映っていることが多く、彼の身辺で起こる出来事も彼の視点で語られるのだが、その視点自体が混乱していく。盗作を非難する謎の男(ジョン・タトゥーロ)に脅える小心…

恋の門

松尾スズキ初監督作品。蒼木門(松田龍平)が石の漫画を描く(作る?)という点を除けば売れる漫画か売れない石の芸術家かの選択とか、風俗店の前で躊躇したりする初体験に関する話とか、案外ありきたりのキャラなのに対して、最初会社勤めして普通に見える…

エクソシスト ビギニング

悪魔払いの物語である以上、観客が期待するのは単なる特撮モンスターとの対決や追いかけっこではなく、画面にみなぎる禍々しい悪魔的存在の雰囲気である。その雰囲気を出すために、カラス、蝿、蛆虫、ハイエナ、地下から発掘されたビザンチン時代の教会、逆…

下弦の月 ラスト・クォーター

原作は未読。複雑な家庭環境で家に自分の居場所がなく、だから恋人の隣にいることが何よりも大切なのに、彼氏の知己(成宮寛貴)が自分の友達と浮気して、自分だけのものと信じていた居場所も失った美月(栗山千明)が、謎めいた洋館でアダム(HYDE)と出会…

ツイステッド

父が母を殺し自殺するというトラウマ的事件が原因なのか、男性への攻撃衝動を持ち、実際に男性を打ちのめしてしまうほどの細身だが鍛えられた肉体を持ちながら、一度関係を持った男性の同僚がストーカーになってしまうほど男性を惹きつける魅力も持っていて…

予言

前半、子供を失った主人公の心理描写や夫婦関係の描写に時間を割いているのだが、夫婦が恐怖新聞の謎を追うプロセスに、例えばリングのような切迫感がなく、間延びした感じになってしまっている。リングのように死への明確なタイムリミットが設定されていな…

感染

備品すら不足しつつある経営危機の古びた病院が、もはや患者を責任を持ってみることができなっていく前半はなかなかいい。人手不足のためスタッフは過労で判断力を失っていき、患者は十分な手当てを受けられず放置され、新人スタッフはろくに注射や縫合もで…

珈琲時光

カーテンやすだれ、すりガラスなどで区切られた画面の奥から手前のほうへ柔らかい光が染み出してきていて、蝉の声や車の通る音なども聞こえてくる。侯孝賢の映画において、内部は外部から完全に遮断されているのではなく、光や音によって外部に開かれている…

堕天使のパスポート

ロンドンの狭いアパートの一室で互いの慣習の違いに配慮しながら密かに相手のことを想って共同生活を送っているトルコ人移民(クルド人の可能性もある)のシェナイ(オドレイ・トトゥ)とナイジェリア人不法滞在者のオクウェイ(キウェテル・イジョフォー)…

インファナル・アフェア 無間序曲

前作が二人のスター、トニー・レオンとアンディ・ラウ演じる「潜入」同士の緊張感あふれる駆け引きと対決がメインだったのに対し、今作は警察と黒社会の抗争を描く群像劇となっている。若いころの潜入二人ももちろん登場するが、中心となるのはむしろ二人の…

[映画] トゥー・ブラザーズ

この種の映画におきまりの「身勝手な人間たち(純粋な野生動物と対照的)」がたくさん出てくるのは監督の意図なんだろうが、それにしても主役のハンターと子供を除いた後の連中はあまりに薄っぺらなキャラである。しかも(あまり面白くない)ギャグに徹して…

アイ,ロボット

アシモフからとった題名から論理的で緻密な世界観の設定をもつ古典的SFを期待する人もいるかもしれないがそうではなく、あくまでウィル・スミス主演のアクションを主体とした娯楽SF映画。ロボット工場にずらりと並んだ千体のロボットの中にサニーが紛れ込む…

バイオハザードⅡ アポカリプス

銃を撃つ音と物が壊れる音を90分ずっと大音量で浴び続ける映画。テレビゲームの場合と同じくここでのゾンビは銃を持つ人間にとって動きの遅い格好の標的でしかなくい。代わりに動きの早いネメシスが登場するが、今作のアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は…