[映画] トゥー・ブラザーズ

 この種の映画におきまりの「身勝手な人間たち(純粋な野生動物と対照的)」がたくさん出てくるのは監督の意図なんだろうが、それにしても主役のハンターと子供を除いた後の連中はあまりに薄っぺらなキャラである。しかも(あまり面白くない)ギャグに徹しているわけでもなく、現地の知事がトラに対してまじめな顔で「偉大な父の影に苦しむ息子の苦悩」を語ったりして、お前はそうじゃないのか、とか聞くんだけど、野生動物にそんなフロイト的抑圧なんかないっつーの。ギャグとして笑えたのは闘技場を逃げ出した虎が人間をパニックに陥れるところで、人間同士のさえない演技を見せるよりそういう動きのあるシーンがもっと見たかった。あと、虎ハンターのキャラも前半では金のために危険を冒し、平気で野生動物を数え切れないくらい殺してきた男だったのが、子虎に指をなめられたあたりで急に変わって、最後は人間の安全か野生動物の命かで苦悩する男になっているのだが、前半の軽いキャラのせいで最後苦悩するところがもう一つもりあがらない。
 大きな猫のようなしぐさをして可愛らしいトラたちが一生懸命「演じている」のは、野生から人間の世界につれてこられ、また野生に戻っていくトラの物語で、もちろん調教するのは大変だっただろうと思う。ただ、この撮影で使われたトラは、人間から調教を受けながら、人間から解放される(サーカスの調教から解放されるシーンまである)野生動物を「演じている」。しかもトラの内面に人間的な兄弟愛や家族愛があることを表現しようとするカット割が多く、闘技場で切り返しのショットで互いを見つめあい兄弟であることを思い出すシーンが典型的だが、ちょっとやりすぎと思える。アニメのデフォルメされたキャラならともかく、本物の動物にそこまでさせるとギャグに見えてしまう。
 これは余談だけど、前半の仏像を盗掘するシーンではマッハを思い出してちょっと笑った。そんな罰当たりなことしたら肘打ち&膝蹴り食らうよ。