エクソシスト ビギニング

 悪魔払いの物語である以上、観客が期待するのは単なる特撮モンスターとの対決や追いかけっこではなく、画面にみなぎる禍々しい悪魔的存在の雰囲気である。その雰囲気を出すために、カラス、蝿、蛆虫、ハイエナ、地下から発掘されたビザンチン時代の教会、逆さにされた十字架、悪魔の彫像、人間の心理の暗黒面(人種対立、ナチスドイツ)など、いろんなアイテムが用意されている。そして何かが潜んでいるかのような闇を画面に収めるために、撮影監督としてなんと、ダリオ・アルジェント、コッポラ、ベルトルッチなどと仕事をしてきたあのヴィットリオ・ストラーロが起用されている。過去の戦争体験が忘れられないメリン神父(ステラン・スカルスゲールド)の苦悩にゆがんだ表情や、艶っぽい女医を演じるイザベラ・スカルプコなども陰影にとんだ画面によって引き立っている。
 最近のアメリカのホラー映画同様、恐怖演出が音での脅かしやグロテスクな描写くらいしかないのが残念なところ。ハイエナが子供を襲うところや、最後の悪魔と神父との対決場面も、アクション映画のリズムに近い。女医が出血する場面などのゆるやかな移動撮影もあるが、これはレニー・ハーリン監督よりストラーロのリズムなのかもしれない。