2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

アビエイター

冒頭と終盤に短く挿入される少年時代の母との入浴場面がこの長い映画全体を支えている。薄暗い部屋の中で、石鹸水を使って母に体を洗ってもらう場面には、父親の姿はなく、まるで羊水の中にいる胎児のように、ハワードは母親によって作られた石鹸水の皮膜の…

ロング・エンゲージメント

それなりに金をかけて再現された戦争場面、アメリ風の演出がされた場面、そしてミステリー映画風に演出された場面、この三つが入り混じって出てくるのだが、どこにアクセントが置かれているのか分からない映画だった。ギャスパー・ウリエルが兵士マネク、彼…

カナリア

走る岩瀬光一(石田法嗣)にカメラが寄り添い、打楽器の音も寄り添う。足音が刻む一つの単純なリズムがどんどん強度を増していく。そこに突然車が横切り横転し、そこで登場した少女由希(谷村美月)の早口の関西弁のリズムが加わり、映画の刻むビートはさら…

ローレライ

潜水艦内部は非常に狭いため、カメラの動きや芝居の自由度は当然低くなり、映画の撮影にとっていい条件ではないだろう。もちろん、今までの潜水艦映画はその狭さを逆手にとって、人間が生きていけない深海の水に取り囲まれた閉域にいる乗組員の恐怖と緊張感…

香港国際警察 NEW POLICE STORY

香港映画で主役として暴れまわるジャッキー・チェンを映画館で見るのは久しぶりかもしれない。ハリウッドで道化的な役が多かったことへの反動か、今回はかなりシリアスな役だが、小さな体ですばしっこく動き回る、昔のサイレント映画を思わせるようなコミカ…

トニー滝谷

イッセー尾形と宮沢りえが本当の夫婦のように自然に画面のなかに収まっている。そしてこのツーショットがあまりに自然なので、またあの孤独の牢獄に戻ってしまったらどうしようというトニーの恐怖感が、背後でなっている時計の秒針の音とともに観客にも伝わ…

セルラー

登場人物の描写に無駄がなく的確なので、ストーリーが停滞することなくテンポ良く進んでいく。最初登場する郊外の住宅街を歩く母子はどこにでもいそうな感じ(キム・ベイシンガーが色気を抑えて住宅街の平凡な母親をうまく演じている)で、事件から遠い存在…