感染

 備品すら不足しつつある経営危機の古びた病院が、もはや患者を責任を持ってみることができなっていく前半はなかなかいい。人手不足のためスタッフは過労で判断力を失っていき、患者は十分な手当てを受けられず放置され、新人スタッフはろくに注射や縫合もできず、患者を練習材料にしている。追い詰められた状況の中でスタッフ同士の人間関係はぎくしゃくしていく。スタッフたちの疲労がピークに達したとき、様態の急変した患者の治療で致命的なミスを犯してしまい、患者は死亡する。ここまでのプロセスやその後の責任のなすりあいやミスの隠蔽工作はリアリティがあって恐ろしい。またこの後の感染にスタッフたちの事故への罪悪感を結びつけるアイデアもおもしろい。
 ただ、その肝心の感染自体の描写がホラーとしてはあまりおもしろくない。飛沫感染するウイルスを特撮で描写しつつ病院スタッフたちの心理描写もしようとしているのだが、特撮をつかったホラー演出の部分は目新しいものはあまりなく、低予算のゾンビ映画みたいだし、ああいうオチを持ってくるならスタッフたちが狂っていくような心理描写がもっと必要な気がする。