海猫

 兄弟両方から愛され破滅する女性という物語内容にもかかわらず、主人公薫(伊東美咲)の感情の動き、情感の高まりなどが画面からほとんど伝わらないので見ているのがかなりつらかった。口数の少ない女性という設定なのだろうが、表情からも少ないセリフからも感情が伝わらないのでただの感情の乏しい人にしかみえない。では何度も繰り返されるベッドシーンはどうかといと、これも短いカットとスローモーションを組み合わせただけで、出番の少ない夫の愛人役小島聖のベッドーシーンに完全に負けている。もちろん露出度の問題ではなくて相手に対する感情がそのシーンを通じて伝わるかどうかの問題である。主人公の感情の揺れが全く伝わってこないのにストーリーだけが進んでいく。クライマックスでも雨を降らせたりして盛り上げようとはしているのだが・・・。海猫のイメージも主人公としっかり結びつくような演出がされていない。主人公を愛する兄弟(佐藤浩市仲村トオル)の感情もあまり伝わらないのだから、これは演出とか脚本が悪いのだと思う。森田芳光ってここまで悪くはなかったと思うのだが・・・。