ツイステッド

 父が母を殺し自殺するというトラウマ的事件が原因なのか、男性への攻撃衝動を持ち、実際に男性を打ちのめしてしまうほどの細身だが鍛えられた肉体を持ちながら、一度関係を持った男性の同僚がストーカーになってしまうほど男性を惹きつける魅力も持っていて自らバーで一夜を過ごす男性を探し、それでいて刑事として男性の同僚顔負けの極めて優れた判断力をもつ主人公の女刑事(アシュレイ・ジャド)の悪夢的体験がこの映画の中心である。彼女の職場の同僚たちはほとんどが男性であり、パートナーのデマルコ(アンディ・ガルシア)や父の親友だった本部長(サミュエル・L・ジャクソン)、以前いた部署の同僚のような一部の理解者を除けば、彼女にとってプレッシャーのかかる環境である。そこにはいつまでもつきまとう前の彼氏や彼女の手柄をねたみネチネチ攻撃してくる同僚がいる。それは彼女の内なる攻撃衝動が増幅されるような環境でもある。そして仕事の後一夜を過ごす相手をバーで求めることも、攻撃衝動の表れでしかない。抑えている自分の攻撃衝動が完全に満たされ現実となって目の前に表れるというのは快楽的というよりもむしろ恐ろしい悪夢なのだが、彼女の周りで関係した男性が、無意識の暗い水面から浮かび上がってきたかのように次々と水際で死体となって発見されるという連続殺人はまさにそういう体験である。
 だから真犯人は誰かという謎解きそのものはさほど重要ではない。見所は、あるときは凶暴さを漂わせ、あるときは内なる自分の攻撃衝動に脅える繊細さを見せながらこの悪夢的体験を見事に演じるアシュレイ・ジャドの存在感と、この悪夢を霧でかすんだサンフランシスコを舞台に的確に描写するフィリップ・カウフマンの演出である。