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雑魚の撃った弾は主要人物には当たらないのが映画の約束事とはいえ、当たるかもしれないという緊張感をもたせるのが監督の演出ではないだろうか。空港で警官に囲まれようが、地下鉄を狙撃隊に囲まれようが、二人か三人でバリバリ撃っているだけで相手がバタバタ倒れて突破できてしまうのでは、いくら悪役の強さを強調するためとはいえ、興ざめである。元特殊工作員(パク・サンミン)という設定なんだからもう少し工夫して囲みを突破するという演出のアイデアがほしいところだ。地下鉄という日常的に使う交通機関を狙ったテロを扱うアクション映画なんだからある程度のリアリティは必要なのでは?
 地下鉄が次々と危機に見舞われ、これがクライマックスかと思うとまだ次がある。冒頭の空港のアクションシーンも含めアクションの詰め込みすぎで、そのしわ寄せが登場人物たちの描写不足となって表れている。元特殊工作員の過去と犯行動機、彼と刑事との因縁、刑事(キム・ソックン)と女スリ(ぺ・ドゥナ)との恋愛関係、三人それぞれの人物像などの描写が薄い。(映画が長くなりすぎて編集で削ったとペ・ドゥナが残念そうに言っていた。)体を張ってアクションシーンをこなして熱演している俳優たちの問題ではなく脚本や構成の問題で、アクション映画でも主人公に血肉を通わせる場面が必要だと思う。政治家、乗客たちなどのドラマもあっちこっちに焦点が移って中途半端な印象をもった。ただ衝突を避けようとする地下鉄関係者の室内での奮闘は面白かった。
 クライマックスの場面から考えると、刑事と女スリの関係はもっと描く必要があると思うけれど、人物関係の説明不足をある程度補っていたのがぺ・ドゥナの大きな瞳の魅力である。刑事を見つめる時、悪役と対峙している時、セリフは少なくても彼女のまなざしの強さが女スリの想いの強さを伝えている。