SPIRIT


 強さを求める戦いが血なまぐさい殺人の応酬に行き着く前半、自然や村人との調和の中で生きる中盤、そして両方の特徴つまり静と動を併せ持つアクションをジェット・リーが見せるクライマックスの戦い、という三つのパートがうまくつながっていて面白い。
 アクションの演出もストーリー展開と密接に関係していて、前半の最後の戦いは爽快感のない陰惨で血なまぐさい場面として演出されている。復讐の連鎖で家族を失った悲しみを徐々にいやしていく田園地帯の場面では、主人公の傲慢な態度が穏やかな表情へと変化していき、動きもゆったりと大きなものになっていく。そしてクライマックスの外国人たちとの戦いでは、動きはすばやいが前半とは違う表情をしている。
 前半の荒々しいライバルたち、田園地帯の盲目の女性(スン・リー)、前半から最後まで主人公を見捨てない親友(ドン・ヨン)など、各パートを盛り上げる役者たちもなかなかいい味を出している。植民地支配に苦しむ中国が舞台であり、日本人はみんな悪役だろうなと思い見に行ったが、最後の戦いに登場する中村獅童はフェアに戦う日本人という好感度の高い役を与えられている(そのかわり原田眞人が典型的な悪役をやっている)。スクリーン上でジェット・リーと対峙しても見劣りしない存在感があってなかなか格好良かったと思う。