2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

エリザベスタウン

主人公ドリューがシューズの開発プロジェクトに大失敗したとき、多くの人間が勤める多国籍企業の中で彼がその責任を一人で負うことになる。周りの人間はただ最後の視線、つまりあいつは終わりだ、もう会うこともないだろうという憐れみと軽蔑の入り混じった…

ALWAYS 三丁目の夕日

大量生産、大量消費の時代に入る直前、昭和33年の世界を舞台にしたこの映画では、物と人の関係が私たちの時代とは異なる。冒頭、少年三人がプロペラ紙飛行機を飛ばす場面(ワンカットで撮られていて、作品のテーマを示すと同時に、路地と大通りの距離感を感…

ダーク・ウォーター

映画の最初から最後まで、戸外の場面では必ず雨が降っていて、段々と雨に閉じ込められていくという閉塞感を、私たちは主人公のダリアと共有していくことになる。ダリア(ジェニファー・コネリー)とセシリア(アリエル・ゲイド)親子が住むアパートは明るい…

ブラザーズ・グリム

少女失踪事件が起こるマルバデンの森の雰囲気がいい。日があまり差し込まない薄暗い森の中で、赤い頭巾の少女がいなくなる場面や、危険と知りながら奥に進んでしまうヘンデルとグレーテルの兄妹の場面、グリム兄弟(マット・デイモン、ヒース・レジャー、私…

TAKESHIS'

画面上で、北野武は黒髪のたけしと金髪のたけしに分裂している。この分裂は観客に分かりやすいが、二人の世界はさらに分裂していく。設定上、夢と現実の区別があるらしいということは、眠りから覚める場面で分かるのだが、どれが現実でどれが幻想、どれが本…

アワーミュージック

煉獄編の中でホメロスに関する印象的な言及がある。彼は盲目だったので自分で戦場を見たわけではなく、他人が語る戦争の話を聞いていただけである。戦場から遠く離れて、彼は戦争のイメージを収集し、編集する。もちろん、我々の大多数もまた、戦場を知らな…

春の雪

冒頭、友人の本多(高岡蒼佑)とともに寝転がっている松枝清顕(妻夫木聡)がその目元に浮かべているのは、周囲に対する優雅で酷薄な無関心の表情である。ヨーロッパ貴族のまねごとに熱心な自分の両親を含む華族社会も、国家神道がもたらす崇拝と熱狂に染ま…