ロング・エンゲージメント

 それなりに金をかけて再現された戦争場面、アメリ風の演出がされた場面、そしてミステリー映画風に演出された場面、この三つが入り混じって出てくるのだが、どこにアクセントが置かれているのか分からない映画だった。ギャスパー・ウリエルが兵士マネク、彼を待つ恋人マチルドがオドレイ・トトゥ。二人が戦争で引き裂かれ、そして再び再会できるかどうかが話の中心になるはずなのだが、それ以外の要素を入れすぎているように思う。
 戦争場面はリアルに細部を再現しているが、マネクが中心というよりも群像劇になっている。ただ、ここで恋人の下に帰りたいマネクに焦点が絞られていないと感情移入がしづらいし、脇役たちが印象的とも言いがたい。ミステリー風、犯罪映画風の場面では、マチルドが彼の安否を探ることになるのだが、彼女が自分で謎を発見していくというより、監督が小出しに答えの断片を提示していくだけで、それに付き合うのはつらかった。そこにはマチルドと同じように兵士の帰りを待つ女性たちも描かれるのだが、その関係を十分描く時間の余裕もない。マチルドにせよ、恋人の復讐を果たすため彼の上官たちを暗殺していく女性にせよ、行動の動機は恋愛関係なのだから、そこを十分に描いてくれないと話に入り込みにくい。マチルドとマネクの幼年時代からの関係が描かれるのが後半なのも理解に苦しむところ。
 アメリ風に演出されている場面でのオドレイ・トトゥは魅力的で、ギャスパー・ウリエルが魅力を発揮しているのも平和な場面のほうだった。あんなに戦争場面を入れるならそこで中心となる俳優がもう一人必要だったと思う。