香港国際警察 NEW POLICE STORY

 香港映画で主役として暴れまわるジャッキー・チェンを映画館で見るのは久しぶりかもしれない。ハリウッドで道化的な役が多かったことへの反動か、今回はかなりシリアスな役だが、小さな体ですばしっこく動き回る、昔のサイレント映画を思わせるようなコミカルな動きは今回も健在である。相手を打ちのめす時よりも、相手のパンチをかわすトリッキーな動きとか、爆発から逃げたりする時のほうが魅力的に見える。
 敵のアジトの迷路のような空間での銃撃戦、繁華街でのバスの暴走、時限爆弾の仕掛けなど、工夫をこらした演出も楽しく、最近のジャッキー映画の中ではかなり良い出来。面白いのは、横長のスクリーンを垂直に落ちていくことになぜかジャッキーがこだわっていることで、これはプロジェクトAの頃から変わらない。今回最初に落下するのはジャッキーの部下たちであり、彼は部下の命を救えなかったことをトラウマとして抱えている。以後、犯人を追ってビルの壁を垂直に降りていったり、暴走バスの海への落下を阻止したり、恋人に結び付けられた爆弾内部の球の落下を防いだりするのだが、クライマックスもやはり高所に設定されていて、落下を防ぐことが重要なポイントになる。
 ジャッキーがシリアスな役なので、その代わりに相棒役のニコラス・チェーが二枚目でありながら笑わせてくれる。童顔のジャッキーにシリアスな恋愛場面はちょっと合わないのだが、相手役のチャーリー・ヤンが落ち着いた雰囲気の大人の女性なのでジャッキーの苦手な場面を補っていたと思う。敵役ではリーダー役のダニエル・ウーが凶暴さと幼稚さを兼ね備えた犯人を印象的な眼で演じている。