ブラザーフッド

 英語のbrotherよりも漢字の「兄弟」という言葉のほうが主人公二人にはふさわしい。父がいない家庭で、兄はもっぱら弟の保護者として振舞う。自分の妻子よりも親兄弟を尊重するような道徳観にやや戸惑うところもあるが、兄の命を懸けた徹底的な自己犠牲の精神はチャン・ドンゴンの熱演もあり感動的だ。あと、思想によって分断された同一民族間の戦争である点が物語をさらに悲劇的にしている。つまり敵味方の境界線が極めて恣意的で、その犠牲者が兄の仕事仲間や妻である。
 撮影自体は正直言って自分の好みとはかなり違うものだった。冒頭の兄弟がふざけあう場面でももう少し疾走感みたいなものがあると気持ちいいのになあと思い、あと戦場の場面が手持ちカメラで動き回り爆風であがった土をかぶりながら撮影するという技法を多用していて、もちろんある種の臨場感を出してはいるのだが、爆発のカタルシスを中心にしたアクションシーンにいささか食傷気味になっているんで見ていて疲れてしまった。