ロード・オブ・ウォー 史上最強の武器商人と呼ばれた男


 重いテーマについてナレーションを多く入れて説明する生真面目な映画だが、武器商人を演じるニコラス・ケイジのふてぶてしい取引場面が見ていて楽しい。彼はいかがわしい詐欺師的な面を持つ人間を演じるのが本当に上手い。船の船名をごまかしたりしてインターポールの監視の目をかいくぐる辺りは娯楽映画の楽しさもある。
 映画はしばしば犯罪を快楽的なゲームとして提示する場合があり、他の映画で詐欺師を演じたこともあるニコラス・ケイジの演技を見ていると、行っている犯罪(厳密には法の抜け穴を利用しているので犯罪ではないが)の深刻さを思わず忘れそうになる。ただ、この映画の場合、そういう側面をブラックユーモアにまで高めるのではなく、ニコラス・ケイジ本人がやっている皮肉な口調の回想的なナレーションで当時の国際情勢などを説明させて、真面目とユーモアのバランスをとっている。
 アメリカの労働者が作った銃弾がアフリカの少年を殺すにいたる流通経路を示した冒頭の場面や最後のテロップなど、この映画は監督(アンドリュー・ニコル)のメッセージを簡潔に伝えるという点では成功していると思う。ただ、一つ一つのエピソードの演出や、弟(ジャレッド・レト)や妻(ブリジッド・モイナハン)など主人公の周りにいる家族の心の動きはもう少し丁寧に描いたほうがよかったと思う。