SHINOBI

SHINOBI [DVD]
 恋愛ものとしてみるには、恋愛関係が深まっていく過程がほとんど描かれていないのが物足りない。朧(仲間由紀恵)と弦之介(オダギリジョー)の出会いの場面が冒頭にあり、次の場面ではもう恋仲になっているのだが、印象に残る場面といえば櫛を渡す場面くらいだろうか。最後の海岸?での対決場面までに、もう少し盛り上がる場面が見たかった。
 忍者同士の戦いに関しては、最初の御前での技の披露場面や小四郎(虎牙光揮)と夜叉丸(坂口拓)の対決場面はスピードがあって面白かったが、椎名拮平をはじめとして個性的な俳優が演じている忍者たちの特徴を十分生かした戦闘場面が少ないのが残念だった。それぞれの陣営の女性忍者、陽炎(黒谷友香)と蛍火(沢尻エリカ)には、それぞれ主人公と関係するドラマがあって、演じている二人もよかったと思う。
 両陣営に戦いを強いる権力者も、非情に徹するわけでもなく中途半端で物足りない。隠れ里が攻撃される場面が観客にサスペンスを感じさせるほど映画として盛り上がる場面になっていたとは思えないし、最後がまるで百姓一揆とか直訴とかを思い出させるような解決方法なのも、がっかりさせられた。
 弦之介がアクション映画というよりも近代文学の主人公のように戦うことに疑問を感じてなかなか刀を抜かないというのは、物足りない人もいるだろうが、私には面白かった。やむを得ず刀を抜き相手を倒した後には、戦いを嘆く叫び声をあげる。朧との対決場面まで、この姿勢は一貫している。この非戦的な忍者をいつもよりも細い声でオダギリが演じていて、案外声が低くて顔立ちもシャープな仲間由紀恵と対照的である。