奥さまは魔女

 鼻を動かしたり耳たぶを触ったりするおなじみの魔女のしぐさを何度もするニコール・キッドマンが可愛らしい。魔女の世界から来たばかりで世間知らずで恋愛にあこがれている女性という、いつものシャープなイメージとは正反対の役をやっている。まるで学生のように近所や同僚の女性たちとにぎやかにおしゃべりして騒いでいる場面が楽しい。
 こういう主人公にはやはり昔のテレビシリーズのようなのんびりしたホームドラマの雰囲気があっている(父役のマイケル・ケインやアイリス役のシャーリー・マクレーンはそういう雰囲気をもっている)と思うのだが、ウィル・フェレルが恋の相手を演じるこの映画では、彼のややオーバーアクションのギャグが今のお笑い番組のようで、アメリカ人の観客は笑えるのかもしれないが、見ていて疲れた。 落ち目で嫌われ者の俳優という設定なので、うざったい男性に見えるのも演出のうちだとは思うが、優しいところを見せる場面ももう少しあったほうがよかったと思う。
 何でも魔法でかなえられる魔女が求めている相手が、自分の魔法なしではどうしようもないダメ男だという、ノーラ・エフロン監督が考えた設定は今の女性観客の好みを反映しているのだろうか。ドラマ撮影の舞台裏が物語の舞台になるという設定も、昔ながらの楽しい家庭のホームドラマでは物語が成立しなくなっている(実際ドラマ撮影は夫のダメ演技で失敗ばかりなのだが)ことを表しているのかもしれない。