亀は意外と速く泳ぐ

亀は意外と速く泳ぐ デラックス版 [DVD]
 三木聡監督本人が小ネタ主義と言っているように、小さな脱力ギャグが連発されるのだが、これと上野樹里の相性が非常にいい。個性派俳優がたくさん出演しているが、面白さの理由はそれだけではない。彼らの横で困った顔をして小首をかしげている彼女が受けの演技をして初めて彼らの個性が際立つことになる。岩松了ふせえりを相手にしている場面は特に楽しい。最大のポイントは上野樹里自身がナレーションを担当していることだろう。彼女がのんびりした声でつっこみを入れることで、初めて画面上での彼女自身や個性派俳優たちのギャグが生きてくる。要潤の意外な三枚目ぶりが生きてくるのは彼女の突っ込みがあるからである。
 逆に言うと彼女が演じるスズメの視点から離れている場面(公安部の場面など)では、受けの演技をする人がいなくなりギャグは画面上から直接観客に向けられることになるので、面白さが半減する。あと、持続時間の短い小ネタの演出は面白いが、話が少し真面目な方向に向かい場面の持続時間が長くなると急に失速する。せつなさを出そうとしているのだが、脱力ギャグに徹したほうがよかったように思う。