スターウォーズ エピソード3 シスの復讐

 シリーズ全体に言えることは、どんな窮地も冗談を交えながら切り抜けてしまう楽天性と、親子が善と悪に分かれて対立するという悲劇性が両方存在するということだ。旧シリーズでは楽天性のイメージのほうが強かったと思うし、悲劇性を体現するような役者は(マスクをかぶったダースベイダーを除けば)いなかった。しかし、善の勝利へと向かう旧シリーズと違って、新シリーズは悪に向かって堕ちていくわけだから、悲劇性は当然強くなっていく。
 旧シリーズの楽天性を受け継いでいるのはユアン・マクレガーだろう。冒頭の議長救出や、グリーバス将軍との対決は、R2-D2とのやり取りなど、旧シリーズと共通する楽しさがある。これらの場面で使われている特撮は、技術的には進んでいるにもかかわらず、新しいというよりも懐かしいという感じがする。世界観自体はシリーズを通して変わっていないのだから当然なのだが、SF映画で新しい世界観と出会うことはもうあまり期待できないのかもしれない。
 しかしこの映画で最大の魅力はアナキンの悪への転落を陰りのある表情で演じているヘイデン・クリステンセンである。パルパティーン議長(イアン・マクダーミド)との緊張感ある会話の中での、彼の混乱した表情は今までのシリーズにはなかった魅力をこの映画にもたらしている。冷酷な殺戮者となった時の鋭い眼差しも観客に凄みを感じさせるものになっている。
 ただ、ジョージ・ルーカス監督の心理面に関する演出が上手かというとそうでもない。特にパドメ(ナタリー・ポートマン)との恋愛関係はアナキンの決断にとって決定的なので、もう少し丁寧に描写してほしかったし、ナタリーにもうちょっとちゃんと照明を当ててきれいにとってほしかった。ただ、女性の演出と撮影はシリーズ全体を通して当てはまる弱点なのだが。あと、最後の決闘場面で悲劇を締めくくる役割をユアン・マクレガー演じるオビ=ワンが果たすのだが、前半に楽天的なイメージで登場しているので、最後の場面に必要な凄みや非情さがあまり感じられなかった。