ザ・インタープリター

 ただ守られている女性ではなく、人には話せないある秘密の過去と悲壮な決意を秘めている国連通訳をニコール・キッドマンが、持ち味のシャープな存在感を生かして好演している。個人的には華美なドレスよりも、この映画のような働く女性らしい黒いパンツルックのほうがよく似合うと思う。暗殺計画を耳にしてしまった通訳シルヴィアの決意は後半まで語られないのだが、鋭い眼差しが常に彼女が強い意志を持ち続けていることを示し続けている。
 ニコールを守る役ができる男性は限られてくると思うのだが、ショーン・ペンは今一番画面に緊迫感を醸し出すことのできる男優ではないだろうか。彼女を警護しながら暗殺計画を阻止しようとする、一瞬も気を抜けないシークレット・サービスの役ははまり役である。過去の体験からくる苦悩を醸し出す渋さもいい。映画が進むにつれ二人の距離は近づいていくのだが、二人の関係が必要以上に甘くならないので、緊張感は維持されている。
 爆弾テロの場面はあるものの、派手な銃撃戦などを期待する映画ではない。暗殺計画に関わる側の描写がやや足りないが、テロの場面で、複数の登場人物の行動がバスの中で交わるところの演出は緊迫感がある。