ドリーマーズ

 アメリカ人大学生(マイケル・ピット)が美しい双子の姉弟エヴァ・グリーンルイ・ガレル)とパリで映画を介して出会う。同じベッドで全裸のまま一緒に寝ている一卵性姉弟の生活の中に、人前で服を脱ぐことさえためらっていたマシューが、映画俳優たちの動きを模倣して映画のタイトルを当てあうクイズ、その後の罰ゲームなどを通して誘いこまれていく過程は、誘惑的な二人のまなざし、歴史的な時間の経過から切り離されたような姉弟の関係(こういう姉弟の関係が永遠に続けばいいのにという姉のセリフがある)にふさわしい鏡や水などによって官能的に描かれている。そこには映画のスクリーンと関係する、反映、類似、模倣といったベルトルッチ的なテーマ群がからみあっている。
 もちろん合わせ鏡のような姉妹の関係に外部の第三者を加えたこの三人の関係は葛藤をはらんでいる。姉を外に誘い出し成熟した恋人関係を形成しようとする主人公と、成熟を拒否し(一見クールに見える姉の部屋は子供用のぬいぐるみが置いてある)合わせ鏡のような関係の内部に閉じこもろうとする二人。ただ、関係が形成されてゆく前半に比べ、関係の崩壊を描く後半は図式的でやや精彩を欠いているように思う。両親の介入(といっても眠っている全裸の三人を目撃するだけだが、姉は極度にこれを恐れている)、ガラス窓(これも一種の鏡、スクリーンだと思うが)を破って介入してくる革命運動という社会の介入がこの三人の関係を終わらせる。また街頭で三人は暴力革命に積極的にかかわろうとする姉弟とそこから身を引くマシューに分裂する。これらの出来事が最後に続けて起こるのだが、図式に従って人物が動いて話が終わったという感じであっけなかった。