スイミング・プール

 今まで決まりきったパターンの人気推理小説を書き続けてきた女性作家が、いらだちを男性編集者にぶつけ、彼は自分のフランスにある別荘を利用して創作に励むことを提案する。

 作家としても、女性としても自らの性的な側面を抑圧してきた、あるいは抑圧することを強いられてきた作家が、別荘での生活の中で出会った若い娘をきっかけにして抑圧された感情を解き放っていき、それは1冊の新作に結実する。

 だからフランスの風土自体が作家の身体にとって官能的なものでなくてはならないのだが、彼女がフランスについてすぐに浴びることになる強風、イギリスでは浴びることのできない陽光、最初黒い覆いをかけられていて、やがて若い娘が全裸で泳ぐことになるプールの水面(あまりにもあからさまでわかりやすい彼女の心理の象徴)、これらが画面上で全然官能的なものとして撮影、演出できていないので、あまり楽しめなかった。作家を官能へといざなうはずの若い娘やその周りにいる男性たちもあのキャスティングでは説得力がないのではないだろうか。あと、別荘での殺人事件があまりにもお粗末で、とてもこれが人気推理作家の新作として結実するとは思えない。

 唯一良かったのはシャーロット・ランプリングで、イギリス女性の表面上取り澄ました態度、その下から時々顔をのぞかせる侠気や欲望を演じて見ごたえがあった。