ガラスの脳

DISCASで借りて見ました。これが初見。ASIN:B00005FBSD 恋愛感情の機微などを楽しむという映画ではなく、初めて異性を発見する瞬間(世界を発見する瞬間とも言えますが)の寓話化と考えるべきだと思います。暗い病院の廊下を抜けて白いシーツの白い光に包まれた眠り続ける少女を発見するシーンは撮影もすばらしく、印象に残ります。少女にキスを毎日思春期まで贈り続けるというのは、現実として考えると不気味ですが(笑)、もちろん初めて異性を発見した瞬間に立ち戻り続けるという、ピーターパン的な寓話的設定と考えればいいでしょう。眼を覚ました彼女もまた、限られた5日間で喜びとともに世界を発見し、異性を発見するんですが、それ以上成長することはないので、やはりピーターパン的存在ですね。題名の「ガラス」はそういう時期を表すメタファーでもあります。変に批評的な視線を付け加えずに、そういう寓話を真っ直ぐ作品にしているところに好感を持ちました。

中田秀夫監督はインタビューなどでたびたび言っているように女優を演出することに力を発揮する監督ですが、ここでも世界を発見していく後藤理沙の喜びの表情をとてもうまくとらえています。例えば、記者会見場から主人公に連れ出される場面は回想シーンでもう一度出てきますが、そこでの彼女の表情などはいいですよ。中田監督は女優から魅力的な表情を引き出すのがいつもうまいですね。