コールド・マウンテン

 主演の3人の俳優はみんなすばらしかったです。ジュード・ロウは寡黙だけど情熱を内に秘めている誠実な男性の役にぴったりでした。土に汚れた格好で出てくることが多いし、脱走している間にひげで顔が覆われてしまいますが、それでも魅力が損なわれることがないっていうのはすごいですね。脱走兵狩りの若い男と互いに馬に乗ったまま対峙して銃を抜くシーンはかっこいいです。レニーはどっしりしたたくましい農婦役にぴったし。最初にでてきて鶏の首をきゅっと絞めるシーンは笑えますし、あの場面から、作品のトーンも変わってきます。そしてエイダ役のニコール・キッドマンですが・・・正直言って、最初南部のお嬢様の衣装で出てきたときは違和感がありました。生活力のない控えめなお嬢様という役と、ニコールがもともと持っている強さ、たとえばあの眼の強さとが、合っていないと思いました。しかし徐々にたくましさを身につけていく後半ではそんな違和感は感じず、雪山で黒いコートを着て散弾銃を構えるところはなかなかいいです。花柄のフェミニンな服より黒いコートと散弾銃のほうが似合うんですね、彼女(笑)。故郷に帰る旅路で出会う様々な人々など、脇役もいい人をそろえています。(ナタリー・ポートマンまでいる!)

 俳優がいいのに作品自体にはやや物足りない印象をもちました。戦争に行く前の二人の関係が回想で出てくるんですが、別れの長いキス以外にも観客の印象に残るシーンがあるといいんですけど・・・。二人の関係があまり情熱的なものに感じられないのは演出力か脚本の問題なんでしょうか。アメリカのトラッドミュージックを色々使っているのはよかったですね。いくつかある印象的なセリフは原作からとっているんでしょうか、原作も読みたくなってきました。