キング・アーサー

 世間一般に知られたアーサー王物語とはかなり違い、帝国と植民地の物語になっている。アーサーはローマ帝国から辺境の植民地ブリテンを任された司令官で、騎士たちは征服された民族から徴用された兵士である。森に潜む原住民たちが半裸でボディ・ペインティングという格好で、ローマ帝国時代のブリテンの森を19世紀のアフリカの原始林と重ね合わせて語っているコンラッドの「闇の奥」から発想したのかと一瞬思ったが、キーラ・ナイトレイにあの格好をさせたかっただけかもしれない。アーサーは帝国の理念(自由と平等=民主主義!)のために戦うが、帝国はもはや理念を失っていて、さらにブリテンからの撤退を決定する。このままでは残忍なサクソン族がこの地を支配してしまう。そこで彼はこの地にとどまり(撤兵拒否)、戦う。こうして筋を要約してみると、現在の話みたいに見えてくる。
 男性のキャスティングが地味で、戦場で対決してもいまいち盛り上がりに欠ける。加えて戦場シーンの撮り方ももう一つで、とくに刀の切りあいの部分はひどい。銃の打ち合いと違って剣を持って向かい合った二人の間合いが画面上で表現されていなかったら、緊迫感など生まれようもない。キーラが弓をぐっと引くところはなかなかいいけれど、半裸のキーラと鎧姿の地味な顔のアーサー(クライブ・オーウェン)と毛皮着たサクソン族(こっちのほうが強そう・・)が入り混じって戦っていると何時代のどこの話で暑いのか寒いのか(雪降ったりして寒い設定だろうが)わからなくなってくる。