シェイディ・グローヴ

今日はDISCAS http://www.discas.net/d/d/index.html から借りていた青山真治監督の「シェイディ・グローヴ」ASIN:B00005HAYE を見ました。DISCASにもレビューを書いたけど、もう少し詳しく感想を書いてみます。

理想の結婚という自分の思い込みによって性急に世界とつながろうとしてうまくいかない女と、退職という形で緩やかに世界から距離を置こうとしている男。女は結婚についての親の考えや世間体などに縛られていて、男性は自分の双子の妹が死んだことで自分が希薄な存在になったと信じ込んでいる。二人とも自分のなかにある思い込みのせいで他者(女の場合は恋人、男の場合は職場)とうまく関係をもつことができず、社会の中で居場所を見つけることができない。この二人(特に女主人公)にいらついてしまうか、共感をもって見つめるかによって、この作品への好みはわかれるのではないでしょうか?
他の映画と違って主人公と周囲の世界とのわかりやすい和解があるわけではないし、主人公が成長してうまくやっていくようになるという映画でもありません。この映画での告白は一方的な思い込みの吐露でしかありません。しかしそんな二人にも「つながり」ができます。それがもうこの世には存在しない美しい森の写真です。 この森は最初は写真として、次に夢の中で二人が出会う場所として出てきますが、とても美しいです。最後の森での場面は、二人が世界に対して感じている距離を繊細に感じて映画を見てきた観客にとっては感動的です。正面を向いて手を伸ばし、手を握るという単純な行為が何か奇跡的な瞬間のように感じられます。この二人の関係は携帯電話での偶然の出会いから始まりますが、多くの人が言っている様に、この映画のARITAの声は魅力的です。

この作品ついての監督自身のコメントを http://corpus.pobox.ne.jp/contents/journalistic/aoyama_interview/as_interview10.htm で読むことができます。